SECが暗号資産規制に向けたラウンドテーブルを開催:業界と規制の対話が進む鍵に

2024年3月18日、米証券取引委員会(SEC)はワシントンD.C.の本部にて、暗号資産(クリプトアセット)とブロックチェーン技術に関する規制の未来を見据えたラウンドテーブルを開催しました。
このイベントは、規制当局、業界関係者、学術界、法曹界など多岐にわたる関係者を招き、建設的な対話を目的としています。

開催の背景

SECはこれまでも複数の暗号資産関連企業に対し、未登録証券の販売や詐欺的行為に関する摘発を行ってきました。
しかし、その一方で、業界からは「明確な規制枠組みが不足している」「法的な不確実性がイノベーションを妨げている」との批判も根強く存在していました。

今回のラウンドテーブルは、こうした声を受けて、SECが業界との対話姿勢を示す重要な一歩となったと言えます。

ラウンドテーブルの構成と主なテーマ

ラウンドテーブルは終日開催され、以下のようなセッションが設けられました

1. 現行法と暗号資産:証券性の判断基準

暗号資産がHoweyテスト(投資契約の判断基準)に基づいて証券と見なされるか否か
登録義務の有無や、ディスクロージャー(情報開示)要件についての議論

2. 分散型金融(DeFi)の規制可能性

・DeFiプラットフォームが証券市場とどのように交差しているか
・ノードオペレーターや開発者の責任範囲に関する意見交換

3. カストディ(資産の保管)と投資家保護

・クリプト資産の安全な保管に関するルール整備
・投資家保護の観点から必要な施策

4. 国際的な調和と標準化

・グローバル規制のトレンドと協調の必要性
・EUのMiCA規制との比較

参加者の声

ブロックチェーン企業の代表者からは「ようやく対話の場ができたことは歓迎すべきこと」と前向きな声が上がりました。
一方で、「SECは依然として断片的なアプローチを取っており、包括的なガイドラインの策定が急務」との厳しい意見も見られました。

今後の展望

SECのGary Gensler委員長は「投資家保護を最優先に、法の範囲内でイノベーションを尊重する姿勢を取り続ける」と述べ、規制と技術革新の両立を目指す姿勢を強調しました。
今回のラウンドテーブルは、単なる意見交換の場ではなく、今後の規制方針の形成に向けた「予備調査」としても重要な意味を持つものと見られています。

考察

今回のSECの取り組みは、長らく対立の構図だった「規制当局 vs 業界」の関係性に変化の兆しをもたらすものです。
特に、DeFiやNFTといった新興分野においては、既存の証券法では対応しきれない事例も多く、こうしたラウンドテーブルを通じた柔軟な議論の場は今後ますます重要になるでしょう。

とはいえ、現段階では具体的な規制改正や新制度の導入にまで踏み込んでおらず、投資家や開発者が安心して活動できる「ルールの明文化」には、まだ距離があります。
SECにはこの対話を一過性で終わらせず、制度設計にしっかりと反映させていく責任があります。
今後もこうした対話の機会が継続され、かつ業界の声が実際の政策形成に反映されることが、健全なWeb3.0エコシステムの成長に不可欠です。

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